情報提供元:ローム株式会社
もう、ご存じのことばかりかも知れません。でも、おおざっぱですが、抵抗器のはたらきとその原理などについてもう一度おさらいを…。こんなつもりでさっと目を通していただきたいと思います。
(a)発光しない (b)電流が流れすぎる (c)理想的な動作状態
前述の例で、電気回路を動作させるには、適当な大きさの抵抗器を使用することに触れましたが、ではいったいどの程度の抵抗値をもつ抵抗器を使えばいいのでしょう。このことを明らかにしたのが、オームの法則です。すなわち、電圧をV(単位はV)、電流をI(単位はA)とすると……
V=R・I
…(1)
で表される関係のことです。ここでRは電圧Vと電流のIの比例定数で、これを電気抵抗または単に抵抗(単位はΩ)と呼んでいます。抵抗器は、これを電気部品として実現したもの、というわけです。
ここで、オームの法則の意味を考えてみましょう。
図2の回路で電圧Vが1V、電流Iが1Aだとすると、式(1)から抵抗Rは…
となります。いいかえれば、1Ωとは1Vの電圧を加えたとき、1Aの電流が流れる抵抗値、あるいは1Aの電流を流したときに、電圧が1V発生する抵抗値ということになります。では電圧は1Vのままで、電流だけが0.2Aになった場合の抵抗値は…
となります。また、5Ωの抵抗に1Aの電流を流すためにはどれくらいの電圧が必要か、という場合も…
という具合に求めることができます。このように電気回路では、かならずオームの法則が成立しますから、電圧、電流、抵抗のうち2つの値がわかれば、ほかの1つも計算で求められるわけです。
さてここで、さきほどの図1-(c)で使った抵抗がいくらになるか考えてみましょう。抵抗の両端にかかる電圧VRは、LEDが正常に動作しているとき約2Vになるので、乾電池の電圧3VからLEDの両端の電圧2Vを引いて…
LEDに流す電流ILEDを15mA(1mA=1/1000A)とすると、オームの法則から抵抗値Rは…
したがって、図1-(c)の抵抗の大きさは、67Ωということになります。
一般に、仕事をするためにエネルギーが必要なように、モーターやヒーター、ランプなどといった電気機器が動作するためにも、電気エネルギーが必要です。これらの電気機器が、どれくらいのエネルギーを必要とするかを表すのが消費電力です。この電力(消費電力もおなじ)は電圧と電流の積で表されますから、電力をPとすると…
となります。抵抗に電流を流すとオームの法則によって、両端に電圧が発生するため、電気機器とおなじように抵抗にも電気エネルギーの消費が行われます。たとえば、1Ωの抵抗に1Aの電流を流せば、オームの法則により1Vの電圧が発生するので…
となり、この抵抗の消費電力は1Wということになります。この電力は、抵抗の場合すべて熱となって放射されるため、消費電力が大きすぎると抵抗体そのものの温度が上昇し、最後には焼き切れたり、溶けだしたりします。そのため、何Wまで電力を消費できる抵抗器なのかを示す必要があり、これを表したものが抵抗器の定格電力です。しかし、抵抗焼損などに対する安全性を考えて、定格電力の1/2以下の消費電力で使用されるのがふつうです。
電気回路における接続には、大きく分けて直列接続と並列接続があり、図3にこの接続を示してみました。複数の抵抗器を接続した場合、その合成抵抗値は直列接続と並列接続でそれぞれ異なり、次のようになります。
直列接続の場合:
並列接続の場合:
したがって、図3の場合それぞれ次のようになります。
(a)直列接続の場合の合成抵抗値は…
(b)並列接続の場合の合成抵抗値は…
すなわち、直列の場合は抵抗器が多いほど合成抵抗は大きくなり、並列の場合は抵抗器が多いほど合成抵抗は逆に小さくなります。
面実装タイプ
面実装タイプ
チップ半固定抵抗器
抵抗器のもつ機能による分類です。固定抵抗器と可変抵抗器に分けられ、一般に「抵抗」というと固定抵抗器のことをさします。
抵抗器を構成する素材による分類です。一般によく知られているメタルグレーズの他に、どんな抵抗器があるのかざっと目を通して下さい。
※メタルグレーズ 金属や金属酸化物とガラスを混合し、
アルミナ基板などに高温で焼結させたもの。
大別して、リードタイプと面実装タイプに分けられます。
角チップタイプ
面実装タイプの角チップは、ロームが業界に先駆けて開発したローム抵抗器の主力製品です。
リードレスタイプ
丸形のチップ抵抗器のこと。
ラジアルタイプ
タテ型テーピングに対応するリードタイプ抵抗器の形態で、テーピング加工品だけのものです。
アキシャルタイプ
リードタイプ抵抗器の形状で、本体からまっすぐ両側にリード線がでているもの。
複合抵抗器とは抵抗器を集積させた抵抗器です。
複合抵抗器
基板上におなじ抵抗値、または異なる抵抗値を組み合わせて、ひとつの回路を構成している抵抗器。
感温抵抗器(参考)
抵抗器がもつ、温度変化によって抵抗値が変わる特性を利用した抵抗器。通常、抵抗器としてよりもセンサとして扱われます。用途としてはセンサのほか、半導体素子の温度ドリフトをキャンセルする温度補償回路などに用いられます。
チップ固定抵抗器
基板表面に直接実装できるような電極形状をもった表面実装用抵抗器です。角形チップ抵抗器が固定抵抗器の中で9割近く占めており、今では一般用抵抗器の主流となっています。
炭素皮膜固定抵抗器
安定した磁器体の表面に、抵抗体として炭素皮膜を装着したもので、発熱、燃焼という安全性の点から小電力用としてこれまで多く使用されてきました。
金属皮膜固定抵抗器
炭素皮膜抵抗器の炭素皮膜の代わりに、抵抗材料としてNi-Crなどの金属材料を使用した抵抗器です。炭素皮膜抵抗器にくらべ温度特性や電流雑音、直線性にすぐれており、高精密なものを作ることができます。反面、炭素皮膜抵抗器より高価となります。
酸化金属皮膜抵抗器
金属皮膜抵抗器の金属皮膜の代わりに、酸化スズなどの酸化金属を使用した抵抗器です。酸化金属の皮膜が熱によって燃焼することがないため、数W程度の中電力用として多く用いられます。燃焼せずに発熱するため、実装に注意が必要です。
巻線抵抗器
金属の細い線をセラミックのボビンなどに巻き付けた抵抗器です。温度の影響が小さく、雑音も比較的小さいのですが、周波数特性が悪く高周波回路には、不適当です。また、加工上問題が多いため、ほかの抵抗器に置き替わっています。電力用と精密用があります。
固定体(ソリッド) 抵抗器
炭素粉と樹脂を混合し、固形化した抵抗器です。堅牢だが精密面で難点があり、徐々に炭素皮膜抵抗器に置き替わっています。高耐圧高抵抗のものを作ることができるため、おもに電源回路などの大きなストレスがかかる回路に使用されます。
ネットワーク抵抗器
複数個の抵抗器を一つのパッケージにまとめた複合部品の一種で、部品点数の削減、省力化、高密度化などのメリットから、電子回路の中に多用されはじめています。抵抗体の特性は、一般の厚膜抵抗器と同じです。
厚膜半固定 抵抗器
抵抗体に厚膜を使用した可変抵抗器で、炭素系可変抵抗器にくらべ温度係数が小さくなっています。また、多回転形や種々の形状のものがありますので、アナログ回路の微調整用には、なくてはならない存在になっています。
炭素系 半固定抵抗器
抵抗体材料に炭素皮膜を使用しているため、低価格です。しかし特性的には、あまりすぐれず、特に温度係数は抵抗値により変化しますので規定されていません。
金属皮膜 半固定抵抗器
抵抗体材料にNi-Crなどの金属皮膜を使用した可変抵抗器です。炭素系可変抵抗器にくらべ、すぐれた温度特性、および安定性をもっていますが、価格的には高くなります。
公称抵抗値
IEC(国際電気標準会議)が制定した、Eシリーズ※標準数に基づいて決められた抵抗値で、初値1、公比10I/n(n=6、12、24・・・)に選ぶことにより、各抵抗値の許容誤差が一定になるようにしたもの。このnの値により、E6シリーズ、E12シリーズ、E24シリーズなどと呼んでいます。たとえばE12シリーズでは、1.0、1.2、1.5、18、・・・という値(最大誤差±10)の抵抗値をもって公称抵抗値とします。また、このような数列値は抵抗値だけでなく、コンデンサの静電容量値にも使用されています。
使用温度範囲
抵抗器を連続動作の状態で使用できる、周囲温度の範囲を示します。
定格電力
規定の周囲温度において、連続動作の状態で使用できる電力の最大値。負荷となる抵抗の消費電力によって、使用される抵抗器の種類を決めるのが一般的で、たとえば角形チップ固定抵抗器では1W以下で多く使用されています。また、周囲温度が70℃を越える場合は負荷される電力を軽減する必要があります。
抵抗値許容差
各抵抗器が表示する、公称抵抗値のバラつきの許容誤差を示します。この値は、F、G、J、K、Mなどの記号で表され、それぞれ±1%、±2%、±5%、±10%、±20%の許容誤差を示しています。
抵抗値範囲
各メーカーのシリーズ名、あるいはタイプ別の抵抗器のユーザーに供給できる、抵抗値の範囲を示します。1Ω~1MΩのものが一般的で、時に1Ω以下、1MΩ以上のものが必要とされます。しかしメーカーやシリーズ、タイプによっては、供給できないものがあるため注意が必要です。
定格電圧
規定の周囲温度において連続印加できる、直流または交流電圧(実効値)の最大値。定格電力と公称抵抗値から算出します。ただし、最高使用電圧を超えないこと。通常、耐電圧と呼ばれるものは、この値のことを指しています。
最高使用電圧
抵抗器に応じて規定された、抵抗器に印加できる直流または交流電圧(実効値)の最大値を表します。