情報提供元:ローム株式会社
ダイオードの簡単な歴史と原理などについて、常識的と思われることをさらっと触れておきました。気軽な感じで目を通してください。もちろん、もうよく知っている!という方はこの章をとばしてくださっても結構です。
二極真空管に整流特性、エジソン効果が発見されたのが1884年。そして、実にその8年前の1876年にはセレンの整流作用が発見されていました。このように、半導体の特性を利用して整流効果をだすダイオードの歴史は極めて古い...。でも、真空管よりも古いというのは、ちょっと意外な感じですね。
当初の原始的なダイオード---セレン整流器や鉱石検波器は、黄鉄鉱や方鉛鉱など天然の亜酸化銅(多結晶半導体)を用いていました。その後、精練技術の進化とともに、ゲルマニウムやシリコンなど、感度のいいものが安定してつくれる単結晶半導体の時代に移ってきました。なお、ゲルマニウムは熱に弱いため、現在ではほとんどがシリコンになっています。
ダイオードの素子はPN接合と呼ばれる構造を持っています。P形半導体からの端子をアノード、N形半導体からの端子をカソードといい、アノードからカソードの流れる電流のみを通して、その逆はほとんど通さないという働きがあります。この効果を整流作用といい、いいかえれば、交流を直流に変換する働きのことです。
ダイオード模式図
ダイオード図記号
ダイオードの働きを直感的に捉えるなら、それは「弁」、電流の「弁」です。電気の流れを水の流れにたとえてみると、アノードはいわば上流側、カソードは下流側。上流から下流へと水は流れますが、すなわち電流は流れますが、下流から上流には「弁」が閉じて流れない・・・。これがダイオードの整流原理です。
●弁が開いて電気が流れる(順方向) ●弁が閉じて電気が流れない(逆方向)
ダイオードの接合構造は現在、大別して、PN接合とショットキー形に分かれます。前者は半導体と半導体の接合で、さらに拡散接合形、メサ形に分けられます。後者は、半導体と金属との間で起こる効果を利用するもので、通常、ダイオードにおける〃接合〃という言葉では表現しませんが、ここでは、わかりやすくするために、このカテゴリーの中で分類しておきます。そして現在、小電力・高速性を実現するショットキー接合形が脚光を浴びていますが、ロームはこのショットキーバリア・ダイオードのシリーズ化にも積極的に取り組んでいます。
ダイオードにはアノードとカソードという2つの端子があります。アノードを(+)、カソードを(-)として、アノードからカソードに電流が流れるときの特性を順方向特性といい、VFやIFがこれにあたります。この逆に、アノードが(-)で、カソードに(+)が印加されたとき、ダイオードには電流は基本的に流れません。このときの特性を逆方向特性といい、VRやIRなどが逆方向特性です。
ダイオードは、使用する回路で定まる機能による分類と、主にセット製品の大きさによって要求される形状によって分類があります。煩雑な点は、これらの間に直接的な関連がなく、常にこの両方を頭に入れて考えねばならないこと。しかし、基本となるのは機能で、これをさまざまなカタチで補強するような感じで形状による分類がある、と考えればよいようです。
ダイオードの最も基本的な分類です。
■ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)
逆方向電圧を加えたときに起こるツェナー効果によって定電圧を発生するダイオードのことで、定電圧ダイオードともいいます。得られた定電圧を利用して定電圧回路など、基準電圧を必要とする回路に用いられます。
■ショットキーバリアダイオード
N形半導体に直接、ショットキーゲート電極をつけ、金属と半導体の接触面で逆方向電圧を阻止する働き(ショットキーバリア)を利用するダイオードのことです。高周波用、一般整流用があり、高周波用はUHF帯、マイクロ波帯の検波やミキサ用高速スイッチング用に多く用いられます。他方、一般整流用ショットキーバリア・ダイオードは、一般整流ダイオードに比べ順方向電圧が小さく、逆方向耐圧をあまり大きくできないため、(現在では、100~200Vぐらいまで)、低電圧大電流の電源整流用として、あるいは、逆回復時間の小ささを利用して高周波を整流するスイッチング電源用として用いられます。
■スイッチングダイオード
PN接合の整流性(順方向および逆方向バイアス時抵抗の著しい違い)を利用して、回路のON、OFFのスイッチングを主に行うダイオードです。一般にスイッチングダイオードというと、ショットキーバリアダイオードやバンドスイッチングダイオードも含まれることになりますが、ロームではそれらは独立したものと考え、スイッチングダイオードというときは普通に使用されるシリコン小信号用スイッチングダイオードを考えるようにしています。検波や変調、スイッチング、混合などに利用され、ダイオードの総生産量の約半分はスイッチングダイオード。そしてロームはシェア1位を占めています。
■整流ダイオード
一般的に、平均整流電流1A以上のものを指し、電源の整流回路に用います。小電力用から大電力用まで種類も多く、また、パッケージも豊富です。最も多く生産されているのは小電力用の1Aクラスで、整流ダイオードの約70%を占めています。
■バンドスイッチ・ダイオード
一般小信号ダイオードの高周波用として開発されたものです。高周波チューナの周波数帯切り換え(バンド切り換え)用に使用されるため、高周波抵抗を小さく、また端子間容量値も可能な限り低く抑さえてあります。
ツェナーダイオードは、普通、抵抗を直列につないで使用します。このとき、E=R・IZ(Rの両端の電圧)+VZ(ツェナー電圧、一定)が成り立ちます。すなわち、電源電圧Eが変動しても、ツェナー電圧VZは、一定で(ただし、E>VZであることが必要)、EとVZとの差の電圧がRの両端に発生することになります。
※なお、ショットキー・ダイオードは高周波帯と汎用周波数帯とにまたがっています。
---キャリアの動きで説明できる--- アノードからP領域に(+)カソードからN領域に(-)電圧がかかる場合、N領域の電子はP領域に引き寄せられ、またN領域のホールは同じようにN領域に引き寄せられます。その結果、PN接合面は電子やホールの流れを阻止する障害とならず、電流はスムーズに流れることになります。これに反し、アノードからP領域に(-)、カソードからN領域に(+)電圧がかかると、P領域の(-)電極(アノード)に集まり、同様にN領域の電子も(+)電極(カソード)に引き寄せられます。つまりPN接合面に電子もホールもほとんど存在しなくなり、電流は流れなくなるわけです。
■PN接合(順方向)
■PN接合(逆方向)
素子の作り込み構造の違いによる分類です。現在、主流となっているフラットなカタチのプレナー形、および、高耐圧タイプのメサ形に分けられます。
■プレナー形
今日、最もよく使用されている半導体接合の方法で、シリコン基板の上に酸化膜をつくり、必要な個所に穴を開けて不純物をしみ込ませ(拡散)接合をつくります。シリコン酸化膜は不純物のしみ込みにくい性質があるので必要なところに接合をつくることができ、また、シリコン基盤表面にできる接合部分は、この酸化膜で保護され、外部からの汚染に強い構造が得られます。
■メサ形
接合部が富士山のような形になるもので、この構造では逆耐圧(Vr)を大きくつくりやすいため整流ダイオードに多く使用されます。耐圧が大きくしやすい反面、PN接合面が露出する構造のため逆電流(リーグ電流)がプレナー形に比べ大きくなる(悪くなる)傾向があります。ロームでは、整流ダイオードがこの構造です。
※拡散接合形(PN接合形)
シリコン半導体に不純物(ボロンとリン)を熱拡散(高い温度で不純物を浸透させる)して、P形およびN形と呼ばれる不純物拡散領域を形成した構造のものをいいます。その接合部では電位障壁と呼ばれる一種の壁が生まれ、こらが電流の整流作用として働きます。
※ショットキーバリア形
金属と半導体を接合させるときに生じる電位障壁(電位の壁)を利用したものです。金属と半導体を接触させると整流性を示すことは古くから知られていましたが、理論的に説明した人の名がMr.Shottkyで、この構造の名前にもなっています。PN拡散接合形に比べ少数キャリアの蓄積効果がなく逆回復時間が著しく小さいため、高周波における整流効率が非常に良く、また順方向電圧(Vf)も低く電力損失が少ないため高周波整流用途に使用されます。
順方向電流IFの大きさで分けられ、IFが1A未満のものを小信号ダイオード、1A以上のものを整流ダイオードといいます。
ロームの強味として、ダイオードアレイがあげられます。これはディスクリートタイプに対し、ダイオードを集積させた複合ダイオードのこと。最近はツェナーダイオード、ショットキーダイオードの複合アレイ品が充実してきました。
順方向電流IFの大きさで分けられ、IFが1A未満のものを小信号ダイオード、1A以上のものを整流ダイオードといいます。